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思い出のマーニー

よもやま話, 映画の話

思い出のマーニー

私は輪の外側の人間

普通に暮らしたい。
静かに暮らしたい
波風を立てたくない。
そっとしておいてほしい。
かまってほしくない。
でも、本当は誰かと強くつながっていたい。
そんな自分が大嫌い。

自らの生い立ちのトラウマから人との関わりを恐れ、内面に沈んでく少女。杏奈。
裏切られたくないが故に「輪」の外側に自分の身を置き、内側には決して入ろうとしない。
でも本当は内側に入りたい自分を知っていて、そのギャップに嫌悪する。
明るさも気丈さも強さも全く持ち合わせていないキャラクターは、これまでのジブリ作品の主人公としては異質だ。

そんな彼女が療養先の土地で、ひとりの少女…マーニーと出会う。
初対面のマーニーに不思議な懐かしさを感じた杏奈は、マーニーを受け入れ、友情以上の「何か」を感じるようになる。

「マーニー」は杏奈の孤独が生み出した「架空の友人」。
彼女は杏奈にとって理想の相手であると同時に、「自らがこうありたい」と考える理想の姿でもあった。
しかしマーニーは単なる「幻想」ではなかった。
彼女は杏奈と関わりが深い、ある実在する人物の記憶の投影だったのだ。

ふたりの巨匠が関わらないジブリ作品

この映画は宮崎駿、高畑勲というジブリの代名詞とも言える巨匠ふたりが関わっていない作品だ。
監督は米林宏昌さん。
作監はかつて宮崎駿さんと袂を分かった安藤雅司さん。
スタッフロールのどこにも巨匠の名前は登場しない。

巨匠の名に頼らず作品を送り出すというのはジブリにとっては大きなチャレンジで、初めから批判的な姿勢で作品を観る人も多いかもしれない。

でも僕は逆だった。

宮さん(両親の後輩なのであえてそう呼ばせていただく)の作品は「もののけ姫」で感じた「何この説教臭い視点」的な違和感が「千と千尋」で決定的になって以降全く魅力を感じなくなってしまったし、パクさん(両親の後輩なのであえてそう呼ばせていただく)の「一生懸命ふざけようとしているのに根が真面目なので彈け切れない」演出は初めから肌に合わなかった。

だからふたりが関わらない(ほんとに現場に一切口出ししなかったかどうかは甚だ疑問だが)作品は楽しみだった。

淡々と流れる物語と、唐突なクライマックス

物語はあまり起伏もなく、淡々と進んでいく。
ドキドキハラハラもしないし、ワクワクもしない。
普通に流れていく日常生活を淡々と描写している感じだ。

マーニーにも特に幻想的な雰囲気は感じなかった。
(余談だが杏奈とマーニーの声や喋り方が似すぎていて、2人が矢継ぎ早に会話してるとどっちが話してるんだかわからなかった)

杏奈と養母との関わり。杏奈の交友関係。
なんとなく空気はわかるのだが、決定的な台詞や演出がなく、彼女の「孤独」を強く感じることはできなかった。強烈な描写は反感を買うおそれがある…から敢えてこうしたんだろうか?確かに「読み取る」ことはできる。しかし当たり障りがなさすぎて感情移入できなかった。
この点、作品は導入部分では「失敗したな」という印象だった。

クライマックスは「サイロ」のシーン。
ここで急に杏奈が行動的になる。
過去の恐怖の記憶からマーニーを救うべく、マーニーを引き連れてサイロに向かう。
豪雨と不気味な音に怯えるマーニーを「大丈夫」と励ます杏奈。
輪の外側にいた孤独な少女が、大好きな人との繋がりを強烈に感じた瞬間だった。

しかし、マーニーは突然姿を消してしまう。

「また取り残された」

幼いころ、両親が自分を残して死んでしまった悲しみ、絶望が再び杏奈に襲いかかる。

「どうして私を置き去りにしたの?どうして私を裏切ったの?」

マーニーの館に向かって叫ぶ杏奈に、館の窓からマーニーが答える

「お別れしなければならないの。杏奈、お願い。許してくれるって言って…」

杏奈の答えは意外なほど速かった。

「もちろんよ!許してあげる!あなたが大好きだから!」

この台詞がこの作品のキーだ。

追憶シーンで
「お父さん、お母さん、おばあちゃん、みんな私を残して死んでしまった。絶対許さない」
と恨んでいた杏奈が、マーニーを許した。
彼女はここに至って両親の死を受け入れ、自らの境遇を悲しむことをやめたのだ。

感情の変化を波で描写する手法は古典的ではあるが王道でわかりやすい。
それはいいんだけど、この台詞が「唐突」に聞こえたのがちょっと残念だった。

とあれこれ勝手なことを書いてみたものの。
僕はこの作品の原作を読んだことがない。

読んだら、この演出の印象が変わるかな?

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ということで、買ってきた。

Fine on the outside

映画の主題歌。Fine On The Outside (外側でも大丈夫)。

いい曲だった。
実は今回、僕が観た回はエンドクレジットが終わるまで誰一人席を立たなかった。

僕も今はやや外側にいる感じ。
そういう点ではちょっとツボな作品だった。

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