しんせかい – 山本澄人

よもやま話,本の話

19歳の山下スミトは演劇塾で学ぶため、船に乗って北を目指す。辿り着いた先の【谷】では、俳優や脚本家志望の若者たちが自給自足の共同生活を営んでいた。苛酷な肉体労働、【先生】との軋轢、地元の女性と同期の間で揺れ動く感情――

 

芥川賞

年初、芥川賞と直木賞の発表があった。

直木賞の「蜜蜂と遠雷」は浜松のピアノコンクールをモチーフに書かれた作品ということで珍しく買う気になり、しかしさすが話題の書籍は近在の書店ではどこでも売り切れで手に入れられたのは読もうと思い立ってから1週間後のことだった。立派なハードカバーでかつ非常にページ数の多い本で普段純文学にほとんど接していない僕にとってはなかなか敷居が高い。勢いに任せたとは言え買ってしまったのだからと思い読み始めたものの、とんと進まない。

そんなある日、僕が心から敬愛してやまないお方に「芥川賞作品が文藝春秋に全文掲載されてる」と教えてもらった。

なにせこのカテゴリーはこの歳に至ってもなお情けないくらい無知でズブの素人な僕は、芥川賞が文藝春秋の主催で受賞すれば全文掲載されるのだという基本的なことすら知らなかった。であれば単行本を買うより少しお得なので教えてもらったその日の帰宅途中に本屋に寄って生まれて初めて「文藝春秋」を買った。

山本澄人著「しんせかい」

現在難航中の直木賞よりはるかに短い。これなら数日で読めそうだ。
 

わからん

一応最後まで読みはした。
でも僕にはよくからなかった。

純文学ってこういうものなのか。
芥川賞取れるのってこういう作品なのか。

これの面白さとか奥深さがわからないというのは、そろそろ50歳になろうかという人間にとって恥ずべきことなんだろうか。

そういう意味でショックだった。

同じ場所で語られる狭くてあまり起伏のない人間関係と緻密なまでの心理描写。
そして唐突に訪れる「終わり」。

わからん。

読み終わった時に感じたのはただただ敗北感だけだった。