iPhone 3G “Skywalker”

Apple, iPod / iPhone / iPad

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ガジェット好きの血か、携帯電話を持ち始めたのは比較的早かった(ちなみにツーカー)。就職して間もなくだったから1993年か94年あたりだったと思う。
しかしもともと電話そのものを使う頻度が低かったので携帯電話がいつの間にか「ケータイ」などという軽薄な呼称でカテゴライズされる頃には「何となく持ってるだけ」な状態になっていた。メールだのezwebだのお財布ケータイだの機能やサービスはどんどん増えていくのだが何か漠然とした違和感がある。ほぼ同時期に拡散し始めたインターネットを利用したパソコンベースの通信網が世界的な広がりを持ちつつあったのに対して「ケータイ」のサービスやコンテンツどれもこれも非常に閉鎖的でまさにガラパゴスと揶揄される日本の「ケータイ」そのもののように思えた。デジタルデバイス向けであるはずのコンテンツは他のどのデバイスともシームレスに融合できない。機能が増えれば増えるほど余計な作業と管理項目は増し、端末は自己完結型の度合いを深めていく。これを維持しようとすれば自ずとどこまでも端末に縛られることになる。
何かが、いや、全てが違う。早晩これは淘汰されるように思えて仕方がなかった。

アップルが携帯電話を出す…そんな憶測が流れ始めたのはいつの頃だっただろうか。
Windows 95の登場によってオフィス環境にグラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)のパソコンが一気に拡がりを見せた90年代中旬、それ以前からGUIを採用し主にアート系クリエータの世界で揺るぎの無い地位を守ってきたMacの牙城は一気に崩れ去った。会社存亡の危機にまで追い詰められたアップルがiMacで再びマーケットシェアを拡げ始めiPodのヒットで完全復活を遂げて以降、このメーカーの製品が持つ卓越した工業意匠とコンテンツへの注目度は増すばかりだった。

そして遂に2007年。初代iPhoneが発売された。曲面つながりのボディー、ボタンを排除しタッチスクリーンを用いたユーザーインターフェース(UI)を採用するといういかにもアップルらしい製品だった。
しかしこの端末は日本で発売されなかった。米国ではかなり盛り上がりを見せており英文の関連記事がネット上を飛び交っていたが自分には関わりの無いこと。全く興味がなかった。
その代わり、というわけでもないが、iPod Touchが新品整備品で安く出回っているのにたまたま遭遇して購入してみた。
ちょっとした衝撃だった。
タッチセンスのUI以上にひきつけられたのは「好きなアプリケーションが入れられる」ということ。TouchでないiPodは持ったことがあったので母艦であるMacとの連携(まぁiPodの場合は完全に一方通行だったが)やファームウェアのバージョンアップによる性能向上という点においては経験済みだったが、手のひらサイズのタッチスクリーンとそれを利用したアプリケーションによる端末のカスタマイズの効果は想像以上に有益だった。画面が小さいので視認性や操作性に若干問題はあるものの無線LANさえあればメール、ブラウジングがiPodでできてしまう。
Touchを入手してからというもの少なくともメールやブラウズを目的としてMacを起動することはほとんど無くなっていた。起動時間や携帯性を考えればこれだけのためにコンピューターを起動するよりはるかに効率的だったのだ。それに辞書アプリを入れることでこれまで海外出張時に必ず携帯していた電子辞書を持たなくなった。Macとの連携という点においてはまだ一方通行の感があったが、アプリによってはWi-Fiを用いてデータのやり取りをするものも存在しており、「携帯型Mac」のポテンシャルを持った機材であることは明白。これまでの携帯端末とは全く違う可能性の片鱗を感じたわけだ。

そして翌2008年。第2世代となるiPhone 3Gが日本を含む世界の多くの国で発売されることが決まった。製品としては興味があるが、何せ前述の通り携帯電話に関しては決して使えているとはいえない小職である。アプリのことだけであればマイクやカメラを使うもの以外ではiPhoneとTouchに大差は無いという認識だったので始めは買うつもりはなかった。
しかし…考えてみると、たいして使ってもいない「ケータイ」に毎月数千円を吸い上げられているわけで。でも携帯電話を手放すのは時流に合わないとも思うしいざと言うときには不便かもしれないとの思いをまだ払拭しきることはできない。とはいえ使いもしない「ケータイ」に毎月お金を喰われてしまうのはやはり釈然としない。ならiPhoneにしてしまうか。着うたのダウンロードもしたことないしお財布ケータイみたいなサービスも一切使っていない。絵文字メールをすることもない。「ケータイ」には何の未練も無かった。

購入の動機はそんな程度のことだった。逆に言うならiPod Touchの使用経験があったからこそこういう結論に至ったのかもしれない。アップルとしてもいきなりPhoneを出さずにiPod Touchで1クッション置いたのはユーザーを慣らせるという狙いがあったように思え、そういう意味ではこの製品展開の戦略にまんまとハマってしまった感もある。

発売開始から3ヶ月が経過した2008年9月。同じくMac使いの奥さん共々auを解約し、MNP制度を利用してソフトバンクに移った。

この携帯端末は途端に威力を発揮した。Mac使いでかつMobileMeに加入していたということが大きかったのだろう。ブックマーク、メール、連絡先、カレンダー。家のMacをそのまま持ち歩く感覚を得るのに時間は掛からなかった。
これ1台で携帯電話+iPod+電子辞書。海外であったとしてもWi-Fiがあれば通信費用を心配することなくインターネットのサービスを利用できる。海外出張に持っていくガジェットがまた減った。

きっと今後一緒に飛び回ることになるだろうこいつには”Skywalker”という名前をつけた。